日本遺産とは。日本遺産とは何かについて解説します。
このところ「大宰府 日本遺産取り消し」や、「鎌倉 日本遺産取り消しの可能性」 等のニュースが流れ、「日本遺産」という言葉を聞いたことがある人も増えたのではないでしょうか。
とはいっても、「そもそも日本遺産制度って何?」や、「日本遺産になるとすごいの?」のような声もたびたび聞かれます。
今回は文化庁が認定する日本遺産制度について、日本遺産をこよなく愛する現役大学生が解説したいと思います。
日本遺産ポータルサイト | 文化庁が認定する日本の文化・伝統
日本遺産とは
そもそも日本遺産制度とは何なのでしょうか。以下は文化庁の説明を引用したものです。
「日本遺産(Japan Heritage)」は地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを文化庁が認定するものです。
ストーリーを語る上で欠かせない魅力溢れる有形や無形の様々な文化財群を,地域が主体となって総合的に整備・活用し,国内だけでなく海外へも戦略的に発信していくことにより,地域の活性化を図ることを目的としています。
(出所:日本遺産について | 文化庁)
ストーリー?、有形や無形の文化財群?など、聞きなれない言葉が並んでいますが、この点について図を用いて解説します。

これまでの地域の文化資源の活用はこのような形でありました。
地域の文化資源(今回はざっくり4項目)は分野ごとに、それぞれ別々に対外発信されてきました。もちろん重複する部分や、ひとまとめで発信されてきた部分もありますが、それも一部です。

バラバラの文化資源をつなぐ役割を果たすのが日本遺産制度であり、日本遺産ストーリーなのです。
つまり、日本遺産制度の核は日本遺産ストーリーにあるわけですが、一体ストーリーとは何なのでしょうか。
ストーリーの肝に関しては、それぞれの日本遺産によって様相が異なります。
例えば、島根県津和野町の日本遺産「津和野今昔」のストーリーは、「幕末、津和野藩の自然や伝統芸能などを表す絵が100枚描かれた。人々は多くの開発から街を守り、古き良き伝統を継承してきた。」というもので、
ストーリーの肝は「津和野藩の自然や伝統芸能などを表す100枚の絵」です。
他にも兵庫県赤穂市の日本遺産、「日本第一の塩を産したまち 播州赤穂」のストーリーは、「穏やかな海と気候に恵まれ、塩づくりが確立された。塩田の経営で財を成した豪商の邸宅や、塩を諸国へ送る廻船業者の居住地、さらには、製塩に起因する祭事などの面影が今も残る。」というもので、
ストーリーの肝は「製塩」ということになります。

さきほどの図に兵庫県赤穂市の例を重ねるとこのようになります。
「製塩」というストーリーの肝、いわば共通項を介して、産業・文化・自然・建物の4項目が結びついているわけです。
そして、それぞれの要素も見てみると、産物としての塩や、町並みのような形のあるもの(有形の文化財)のみならず、技術や祭りのような形のないもの(無形の文化財)が含まれていることが分かりますね。
これらが有形や無形の文化財群ということなのです。
(「日本第一」の塩を産したまち 播州赤穂 | 日本遺産ポータルサイト)
この2例でも、一方は「100枚の絵」という有形の書物に起因していますし、もう一方は「製塩」という無形の産業に起因しています。ほかにも、生物に起因するものや、自然環境、言い伝え、災害に起因するものまで、ストーリーの肝は多種多様なのです。
日本遺産とは、世界遺産と何が違う?
日本遺産という言葉に似た制度として、「世界遺産」がありますね。では、日本遺産と世界遺産は何が違うのでしょうか。
日本遺産制度の目的をおさらいすると、目的は以下の3点です。
・整備活用すること
・国内外への発信
・地域の活性化
日本遺産は簡単に言えば、「地域の文化をひっくるめて観光活用しようよ!」ということなのです。
では、世界遺産制度の目的は何なのでしょうか。公益社団法人日本ユネスコ協会連盟の説明は以下の通りです。
UNESCOは、世界遺産を”人類共通の遺産”として保護・保全していくための国際的な協力体制を築く国際条約として、1972年第17回UNESCO総会にて「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(通称:世界遺産条約)を採択しました。
(出所:世界遺産とは?-公益社団法人日本ユネスコ協会連盟)
世界遺産は顕著な普遍的価値を持つ遺産を損傷、破壊等の脅威から保護し、保存することにあります。
簡単に言えば、「未来永劫守り続けようよ!」ということです。
そのため、日本遺産と世界遺産は目的がもっぱら異なります。
ちなみに文化庁の施策には「重要文化財」や「国宝」等の指定制度がありますが、これらも修復・修繕への補助等、保護・保全を目的としています。
| 日本遺産 | 世界遺産 | |
|---|---|---|
| 観光活用 | 目的 | 保護・保全 |
日本遺産とは、なぜ文化庁が行う?(持論)
日本遺産は地域の資源をひっくるめて、観光活用することが目的ということが分かっていただけたと思います。
最後に、日本遺産制度は、なぜ文化庁が執り行うのでしょうか。
文化庁(文部科学省文化庁)はもともと、芸術振興や文化財保護(重要文化財・国宝)のような事業を行っていました。
日本には観光を主管する観光庁(国土交通省観光庁)があります。
日本遺産制度が保護・保全ではなく、観光振興を重視しているのに、なぜ文化庁が執り行うのか。観光庁でもいいのではとの疑問があると思います。
これに対する明確な答えは明らかになっていません。ちなみにチャットGPTの答えは以下の通りです。
1.日本遺産の本来の目的
日本遺産は 「文化財を核にして地域の歴史や文化をストーリーとして発信する」 取り組みです。
したがって中心にあるのは観光振興ではなく、文化財の保存・活用
2.観光庁との違い
観光庁の役割:観光資源を活用して交流人口・観光消費を増やす。
文化庁の役割:文化財の保護と活用を通じて地域の文化を継承・発展させる。
3.制度設計上の理由
日本遺産は「文化財そのもの」だけでなく、「文化財が紡ぐストーリー」を認定対象とする独自制度。
ストーリーを通じて点在する文化財を「面」で見せ、地域に根付く歴史・伝統を総合的に理解させる。
この「文化財を活用する視点」は文化庁の専門領域。
正直、どれもピンと来ていません…。加えて、自分の中にも「コレだ!!」という明確な答えがあるわけでもありません。
ただ、私自身、全国の日本遺産、日本遺産に関わる事業者様、自治体職員様、住民の方々と様々意見交換をしてきた中で浮かんだのは、日本遺産の多くは今なお「生きている」文化だからです。(以下、持論です)

日本遺産の要素である地域文化というのは、地域の住民の方々の生活や暮らし、産業、信仰などによって長い時間をかけ、培われ、今も培われ続けています。
言い換えれば、暮らしそのものなわけです。
「観光」というツールは、地域経済の活性化や、事業者の進出による雇用創出のようなメリットがある一方、行き過ぎた観光振興は、地域の小売や商店街などを淘汰し、街を喰らいます。
そして、人と暮らしをも喰らってしまうのです。(京都や河口湖などのオーバーツーリズム状態)
観光振興を上手に行うのは観光庁でしょうし、観光庁が日本遺産制度を執り行っていれば、今、日本遺産制度が抱える課題はとっくに解決していたかもしれません。
しかし、文化庁が行うのは、“守る”ことを意識しているからではないでしょうか。
日本遺産の中には、観光地と生活圏が同一のものもあります。観光地化が進めば、住民生活はひとたまりもなく破壊されます。
そうならないために、文化庁が主導し、石橋を叩いて、叩いて、叩いて渡るくらい慎重に進めているのだと思っています。
日本遺産の一番の課題は認知度の低さ。
10年目を迎える制度の課題に「認知度が低い」ことを挙げられるのは、税金が投入される国の施策としていかがなものかという声もあります。
また、認知度が低いが故、各地域の創意工夫や、取組みが日の目を浴びないことは残念でなりません。が、地域のキャパや認定ストーリーは街それぞれ。各々のペースで頑張ってほしいと思います。
日本遺産はこれからの動向に大注目!
日本遺産とは?日本遺産についての解説は以上になります。いかがでしたか。
いろいろと述べましたが、最後に伝えたいのは、
日本遺産認定ストーリーや、各地域の取組みは魅力的であるということです。
今回は制度について述べましたが、もし反響があれば、これまで訪れてよかった日本遺産や、観光客視点での日本遺産の魅力などの記事も投稿したいと思います。コメントで「日本遺産に関する記事が見たい!」とコメントいただければ、精力的に執筆しますので、ご気軽にお申し付けください。


コメント
インスタグラムの投稿から来ました。私も3年ほど前から日本遺産を巡っています。印象的なのは鯖街道の日本遺産です。今冬は北海道の鮭の聖地を巡ろうと画策しています。